東京などの大都市で、都市施設の整備が遅れる理由の一つは、地価が高すぎて事業費の大部分が用地費に取られてしまうことにあります。これはある意味で悪循環なのであって、都市施設の整備か都市化のスピードに追いつけないうちに、地価が上がってしまいますから、ますます整備が困難になるという状況を生んでいるのです。このような悪循環を断ち切る方法は、まず適切な都市計画を立てて、それに従ってスピーディーに用地買収を進めることです。より一般的にいえば、民主的なプロセスを経て都市計画を立案し、これを毅然として執行するということになります。都市計画が必要な理由は、土地利用における外部経済・不経済の存在と、都市施設の公共財的な性質にある。これは「市場の失敗」といわれるケースで、都市計画は経済活動に「政治の介入」が必要な例です。現代社会における政治的な意思決定は、民主主義的なプロセスを経て行なわれなければなりません。そしてその決定を実施に移すのは、中央・地方の「政府」の役割になります。ところが都市計画は、その三要素(都市施設の整備、土地利用の規制、市街地開発事業)のどれ1つを取っても、関係者の財産(不動産)に直接的に重大な影響を与えるものです。このような場合には、多数決を基本とする「民主主義」で物事を決めるといっても、すべての人を納得させることが難しくなります。このため、政治的な意思決定における民主主義なプロセスというものが、なかなかうまく機能しないのです。これは欧米諸国でも同様ですが、近代化の「遅れ」を背負うアジア諸国、特に日本では、まず都市計画の決定が遅れ、それを毅然として執行することもできない状況が長い間続いてきました。欧米流の法の支配に基づく、割切りができない状態が続いています。一方で欧米流の民主主義よりもうまくいっているように見える「開発独裁」も、根底にはポピュリスム(大衆迎合)かあるために、都市計画のようなデリケートな問題に関しては、やはりうまくいっていません。スラムークリアランス(貧民街の再開発)がなかなか進まないのは、その一例ですが、日本の道路整備の遅れにも、背景に似たような社会的な心理状況があるのではないでしょうか。
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